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HAREYAMAにこめた想い

 美しさを心に届ける

 富山もようを手掛けるテキスタイルデザイナーの鈴木マサルさんは、2014年の1作目「TATEYAMA」の発表以来、ずっと富
山を見つめ続けてきました。能登半島地震が起きてからは、ニュースに触れる度に「被災の当事者ではない自分がどう関わる
べきなのか」と考えたといいます。そして2月末日、氷見市を訪ねました。1階が押しつぶされてしまった家屋、亀裂が入った道
路、がらんと広がる観光スポットの駐車場―。町を見て回り、今回の創作の原点にたどり着きます。「とにかく美しいもの、見
た人が無条件に『きれいだな』と思うものを描こう」と。
 モチーフは、富山と石川の人々が心を寄せる立山と白山に決まりました。表現のヒントになったのが、夕日に照らされたピン
ク色の山々の写真でした。「山というより光が反射しているような雰囲気だな」と感じ、かつて印象派と呼ばれた画家たちが光
を表現するのに用いた点描に行き着きました。「点描は美しさを表現することにつながっている。これなら見た人の
心に入っていけるかもしれない」。立山と白山の峰々が、無数の点で浮かぶ「HAREYAMA(晴れ山)」が完成しました。
 富山もようは今年10周年を迎えます。「何事も10年続けることは大変なこと。続けられたのは、必要とされたからで本当に
うれしい」と鈴木さん。「この先も、時代に寄り添うようなもようができればいいですね」